『自戒』吉原幸子

わかものたちよ
わたしはつひに一度も死ななかった
たぶん 死ぬかはりに
殺すかはりに 書いたからだ

死にたい
と書くことで
死なないですむのなら
詩はクスリみたいな役に立つ
けれど その調子で
生きるかはりに書いてはいけない
愛するかはりに書いてはいけない

花 と書くとき
花は たしかに 失はれる

紙の上に 足をひきずると
いのちは たしかに かるくなったので

わたしは足あとを消しに歩きまはる
すると わたしのうしろに
あたらしい足あとが またついている

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